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第4回"血管のダイレクト評価"を診療に活かす試み~患者さんの治療継続のモチベーションアップへ~

第4回"血管のダイレクト評価"を診療に活かす試み~患者さんの治療継続のモチベーションアップへ~

プロフィール

和﨑 雄一郎 院長 くだまつ美里ハートクリニック
  


昭和60年 山口大学医学部卒業
  山口県厚生連長門総合病院内科
昭和63年 山口大学医学部附属病院第二内科医員
平成4年 山口大学医学部附属病院検査部助手
平成7年 社会保険綜合病院徳山中央病院循環器内科医長
平成9年 社会保険綜合病院徳山中央病院循環器内科部長
平成11年 医療法人好生堂和﨑医院理事長・院長
平成23年 くだまつ美里ハートクリニック開院
認定医・専門医 医学博士
総合内科専門医
循環器専門医
超音波専門医
脈管専門医
抗加齢医学専門医
キレーション認定医
高濃度ビタミンC療法認定医
医師会産業医
所属学会 日本内科学会
日本循環器学会
日本抗加齢医学会
日本超音波医学会
日本脈管学会  ほか

当クリニックにおける動脈硬化診療の考え方

生活習慣病診療は、一般的には動脈硬化関連疾患のリスク管理としての位置づけで捉えられる。動脈硬化関連疾患の代表格である脳心血管疾患は、日本人の2大死亡原因であること、また罹患後の生活の質の低下は要介護状態にも繋がることより、早期から介入・管理し可能な限り予防することが重要であることは言を待たない。

早期介入の端緒となるのが、種々の健診・ドックなどであるが、患者側(医療側も?)の"動脈硬化性疾患の予防"意識は残念ながら乏しい実情にある。例えば、早期に生活習慣病の指摘がありながら、結果通知書に"経過観察"すなわち軽度異常の記載のみの場合は、そのまま医療機関を受診しないか、しても「経過をみましょう」で次年度の健診・ドックまで無為に経過し、運悪く毎年それを繰り返している例も少なからず見受けられる。健診の主旨を双方が十分に認識し、何らかの相談・指導、フォローアップの機会を持ち、改善を期待したい。

病状がやや進行している場合、従来の生活習慣病診療においては、血圧、脂質プロファイル、血糖値などを端的にチェックする効率の良い方法で一定の成果を上げてきたが、一歩進んで、患者背景をさらにきめ細かく把握する観察力・想像力を働かせ、サロゲートマーカーとしての検査数値のみに囚われず、ガイドラインを咀嚼しなおし個々の患者に適用するという、セミテーラーメイドな総合的診療が今日求められる動脈硬化関連疾患診療スタイルと考えている。

当クリニックでは、このような診療に際して、タイミングよく、後述する"血管のダイレクト評価"をツールとして活用するよう取り組んでいる。

古典的動脈硬化関連疾患のガイドラインによる一律の診療への疑問

「人は血管とともに老いる」との言葉が表すように、高齢化社会において、健康長寿を意識した動脈硬化診療の重要性は益々高まっている。 生活習慣病は加齢関連動脈硬化を加速させる危険因子として認識され、これに介入することで間接的に動脈硬化関連疾患の治療に役立てようという意図のもと、各生活習慣病に対してのガイドラインがエビデンスを根拠に確立されており、診療の効率化、診療の質の維持・均一化へ多大な貢献していることは上述したが、ガイドラインを一律に用いることに限界があると考えている。

表現型である生活習慣病に個別に着目するあまり、それぞれのガイドラインをバラバラに適用するという、安易で非効率的な診療にも陥りがちである。根本にある修正すべき生活習慣、隠れた内臓脂肪蓄積、インスリン抵抗性、塩分感受性高血圧など共通病因への思考作業をしなくなってしまう弊害(言い過ぎだろうか)も生じかねない。

また、生活習慣病は古典的動脈硬化危険因子ではあるが、その他にも、高ホモシステイン血症、酸化ストレスなどの種々の因子が複雑に関与する症例も少なからず存在し、ガイドラインの枠を逸脱する症例の対応に苦慮することも多い。特に、ボーダーライン上にある患者群、背景が異なる患者群に対しては、治療意義や治療効果を十分に納得していただくためにも、ガイドラインはあくまでガイドとして用い、それに加えて動脈硬化病変の状態そのものを診療の指標とすることも非常に有用と考える。すなわち、"血管のダイレクト評価(後述)"を診療に生かすということである。患者さんとの信頼関係がぐっと高まること請け合いである。 勿論、全患者に対して行うことは医療効率の面で好ましくないが、実際的には、必要性のある場面で、タイミング良く追加的な評価を行う手順を踏むことになる。

"血管のダイレクト評価"を診療に活かす試み〜患者さんの治療継続のモチベーションアップへ〜


患者さん向け検査案内のパンフレット

生活習慣病診療は、上述したように動脈硬化診療に他ならない。そこで、"血管のダイレクト評価"を行うことが、より質の高い血管診療に繋がる根拠を述べてきた。"血管のダイレクト評価"(あくまでクリニックレベルでの話)とは、具体的には、他のクリニックでも広く行われる①CAVI、②頚動脈エコーに加えて③FMD測定を一連の検査として行うことであり、これにより動脈硬化進展ステージの診断治療開始タイミングの判断、その後の治療効果評価などに正確性・客観性が生まれる。患者さんへの具体的でインパクトのある説明も可能となり、サイレントキラーとして経過する生活習慣病の治療継続のモチベーション維持に大きく寄与してくれる。また診療を通じた客観的情報のフィードバックを常に更新することにより、自分自身の動脈硬化診療のスキルアップおよびスタッフとの情報共有を通じて診療の質の底上げに繋がると考えている。

ただ現状ではデメリットもない訳ではない。①再現性ある検査には経験・技術と手間を要する、②結果説明に時間を要する、③診療報酬の問題などであろうか。ただし、これらを差し引いても得られる情報は、診療における意思決定に重要な示唆を与える。


MIST-100HとProSound α7(日立アロカ製 超音波診断装置)使用

デメリット解消のため、説明用ツールの準備、スタッフとの業務連携・分担などクリニック内で可能な準備工夫をしているが、関連メーカーにも、更なる機器の改良や周辺ソフトなどサポート体制の充実を望みたい。ハード・ソフト面の進歩が動脈硬化関連検査の普及拡大に寄与し、多くの情報の蓄積や解析を通じて、実地臨床の場における動脈硬化性疾患診療が益々発展することが期待される。

また、当クリニックは循環器内科診療主体であるため、プライマリーに止まらず、進行した動脈硬化病変の疑いのある胸部症状や心電図異常などが存在すれば、心エコー検査、トレッドミル検査、ホルター心電図などの心臓精査に進み、更に、関連施設にて冠動脈CT、MRA検査や心臓カテーテル検査まで行うという体制で、早期動脈硬化評価と従来の動脈硬化疾患診療のスムーズな連携を図っている。

今後の展望

当クリニックで本格的にFMD測定を開始してから10ヶ月が経過した。まだ症例数は多くないが、データを蓄積し解析することで、FMD測定を加えた一連の動脈硬化診療のクリニックレベルで簡便で利用価値のあるアルゴリズムが提案できればと考えている。

また、関連メーカーにはFMD測定を中心としたハード・ソフト両面でのさらなる改良を期待したい。

くだまつ美里ハートクリニック

山口県下松市美里町
4丁目10-25
TEL 0833-48-3310

診療科目
内科、循環器内科、呼吸器内科、抗加齢外来
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