所属学会・ 研究会 |
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論文 |
Takashi Miki, Shinobu Hosokawa,Yoshikazu Hiasa, et al. Huge pseudoaneurysm of deep femoral artery without history of catheterization. Eur Heart J. 2008 Jan;29(2):149.〔Epub 2007 Sep 24.〕 Shiro Hoshida, Takashi Miki, Takafumi Nakagawa, et al. Different effects of isoflavones on vascular function in premenopausal and postmenopausal smokers and nonsmokers: NYMPH study. Heart Vessels. 2011 Jan. [Epub ahead of print] |
表彰 | 2009年6月 第34回日本超音波検査学会総会 YIA優秀賞受賞 |
血管超音波検査は血管の形態的変化および機能的変化の両方を診断することができる優れた検査法です。形態的変化では一般的にプラークの有無やプラークの性状、狭窄度評価、血管径の形態的異常、血栓の有無等を評価できます。機能的変化では血流波形における機能的変化や血管弾性検査、血管内皮機能検査などの機能的異常を評価できます。
血管内皮機能検査は前腕動脈プレチスモグラフィーによる血流量の測定や超音波法によるFMD(FMD;flow mediated dilation)測定、冠動脈フローワイヤーによる血流量測定などが存在しますが、それぞれ一長一短であり、最も非侵襲的で繰り返し検査が可能な評価法は超音波法によるFMD測定です 1)。
FMDの研究成果としては、冠動脈ATP負荷による血流量と上腕動脈FMDでは良い相関があること 2)、肥満例では体重減少に伴いFMDが上昇すること 3)、アセチルコリンに対する前腕血流量の変化が11%以下の群では心血管イベントなしの生存率が減少すること 4)などが報告されております。このように血管内皮機能異常は単に従来の危険因子の存在下で生じるものにとどまらず、動脈硬化の進展、あるいは心血管イベントを予知する重要な因子であり、その計測が世界的に普及しつつあります。
検査前の準備
FMD予約時に患者様に渡す説明文「血管内皮機能検査を受けられる患者様へ」を読んで頂き、検査について理解してもらいます。
血管内皮機能は様々な因子により影響を受けます。検査前の準備として被検者の8~10時間程度の絶食・禁煙を行い、水分摂取では水以外の摂取を避け、女性に関しては月経周期による影響も考慮する必要があります。
検査直前の準備
FMD検査直前に「血管内皮機能検査の注意点」を読んでもらいます。以前は口頭で説明していましたが、直前に読んで頂く方が効果的と分りました。検査前に技師が問診を行い、飲食・水以外の飲用・喫煙があればFMD検査は中止します。また、検査を行う部屋については一定温度(22~25℃)を保ち、清音、光についても一定な環境、測定時間等の条件を一定にすることが重要です 。1)
MISTシステムの使用
従来は独自に製作したプローブ保持機とマーキングを用いて検査を行っていましたが、検者間の誤差が大きいため、1人の技師で検査を行っていました。MISTシリーズを使用することで検者間誤差が解消され、現在では3名の技師でルーチン化しています。また、MISTシリーズは仰臥位が困難な場合でも座位で施行できる患者様に優しいシステムです。
当院でのFMD検査予約
外来予約は基本午前9時から2件、入院患者は午前8時半から1件、一日最大3件の枠で検査を行っています。FMD検査のみ30分枠、FMD+NTG(NTG;Nitroglycerin-induced vasodilation)60分枠で施行しています。
また、当院ではFMD単独の依頼はありません。FMD検査前の安静時間(15分)を利用し、頸動脈エコー(B-mode)によるIMT(IMT;intima-media thickness)およびβ値(stiffness parameter)を計測施行しています。FMDと頸動脈エコーをセットで施行することで機能的変化と器質的変化を診断することが可能です。
FMDの対象はメタボリックシンドローム、人間ドック、検診、糖尿病、心血管疾患、脳血管疾患例であり多科から依頼があります。最近では糖尿病教育入院の患者様対してFMDを行い、糖尿病教育による血管内皮機能の改善効果を観察しています。また、薬剤による動脈硬化改善効果を見るためにも活用され、自覚症状の無い患者様に対しても有効な検査です。
①「メタボリックシンドローム検診者におけるFMDの有用性(IMT、plagueとの関連)」
虚血性心疾患および心筋梗塞症例では正常例と比べ有意にFMDは低下している(当院での虚血性心疾患例のFMD値)。メタボリックシンドローム検診例のFMDも正常例に比して低下しており、特にIMT肥厚のある群のFMDはより低値を示し(メタボリックシンドローム検診者におけるFMD値)、脳血管・心血管疾患の危険が非常に高いと考えられる。
②「イソフラボンによる血管機能改善は喫煙や閉経の有無により異なる」 5)
イソフラボン摂取により、喫煙女性では閉経前でも閉経後においてもFMDの上昇はみられなかった。しかし、非喫煙女性では閉経前、閉経後でもFMDは有意に上昇した。一方、血管弾性検査であるCAVI(CAVI;cardio-ankle vascular index)の低下は、閉経前女性では喫煙例、非喫煙例でも認められたが、閉経後女性では喫煙の有無に関わらずみられなかった。イソフラボンは非喫煙女性において血管内皮機能を改善し、閉経前女性において動脈stiffnessを改善すると考えられます。
血管内皮細胞は多彩な機能を有していますが、動脈硬化は内皮細胞の機能障害から始まります。非侵襲検査である血管超音波法によるFMDの測定は、動脈硬化の早期診断として重要な検査法の一つと考えられ、早期の動脈硬化の発見、すなわち予防医学に貢献できる検査法と考えられます。今後、実臨床におけるFMD測定の位置付けが定まり、より重要な検査となることが期待される。
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