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【文献紹介】サプリメントとFMD

健康のためにサプリメントを摂取することは、今や当たり前のこととなっています。サプリメントを短期間飲むだけで、血管内皮機能の測定で有意差を確認することが可能です。近年、サプリメントを服用した際のFMDが測定されています。
 本報ではサプリメントを服用した際の、FMD・血管内皮機能改善に関連のある文献をご紹介します。

目次

"The effect of vitamin D supplementation on flow-mediated dilatation, oxidized LDL and intracellular adhesion molecule 1 on type 2 diabetic patients with hypertension: A randomized, placebo-controlled, double-blind trial"
「ビタミンD補給が高血圧を伴う2型糖尿病患者の血流依存性血管拡張作用、酸化LDL、細胞内接着分子に及ぼす影響:ランダム化プラセボ対照二重盲検試験」


著者:
Reyhaneh Qasemi, Saeid Ghavamzadeh, et al.
出典:
Diabetes & Metabolic Syndrome: Clinical Research & Reviews (2021);15(4):102200.
https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S1871-4021(21)00220-4

要約:
高血圧を伴う2型糖尿病患者44名が、通常の毎日の治療に加えて、2000 IUのビタミンDを含むカプセルもしくはプラセボカプセルを1日1回、12週間服用した。ビタミンD摂取群では、血清ビタミンD値が32.42 ± 10.56から40.45 ± 12.94に上昇した(p < 0.001)。ビタミンD摂取群では、酸化LDLおよび細胞接着分子ICAM1が有意に減少したビタミンD摂取群では、酸化LDL(p = 0.017)およびICAM1(p < 0.001)がプラセボ群と比較して有意に低く、FMDはビタミンD摂取群で有意に高かった(p < 0.001)

Antioxidant vitamin C prevents decline in endothelial function during sitting
「抗酸化ビタミンCは座位時の血管内皮機能の低下を防ぐ」


著者:
Saurabh S Thosar, Sylvanna L Bielko, et al.
出典:
Medical Science Monitor (2015);21:1015-1021.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/pmid/25848890/

要約:
非喫煙者の男性11名で、ビタミンCを摂取しない座位試験(SIT試験)とビタミンCを摂取する座位試験(VIT試験)を行った。参加者は脚を動かさずに3時間座位を保った。さらに、VIT試験では、参加者はそれぞれ30分後と1時間30分後にビタミンC錠剤(30分後に1g、1時間30分後に500mg)を摂取した。FMD測定は座位前、座位1時間後、2時間後、3時間後で、測定された。一元配置分散分析では、座位3時間中にベースラインからFMDが有意に低下した(p<0.001、η 2 =0.506)。一対比較では、ベースラインと1時間後(p=0.003)、2時間後(p=0.014)、3時間後(p=0.013)の差が認められた。同時に、順行性せん断速度(p=0.04)および平均せん断速度(0.037)も有意に低下した。ペアワイズ検定では、ベースライン後の各時間においてSITおよびVIT試験においてSFA間のFMDに有意な差が認められ、VITが1時間後(p=0.009)、2時間後(p=0.016)、および3時間後(p=0.004)のFMD低下を抑制したことが示された。

"Improved vascular function and functional capacity following L‑citrulline administration in patients with heart failure with preserved ejection fraction: a single‑arm, open‑label, prospective pilot study"
「心不全患者におけるL-シトルリン投与後の血管機能および機能的能力の改善:単群、非盲検、前向きパイロットスタディ」


著者:
Stephen M. Ratchford ,Kanokwan Bunsawat , et al.
出典:
Journal of Applied Physiology (2023);134: 328–338.
https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/japplphysiol.00445.2022

要約:
心臓の収縮機能は保たれているにもかかわらず、心室が硬くなって血液を十分に送り出すことが困難になっている心不全(HFpEF)の患者14名を対象とし、Lシトルリン(NOW Foods社製)を1日2回(1回3g)摂取し、7日目に再度評価した。FMD値は2.5±1.6(0日目)から4.5±2.9(7日目)となり、有意であった。(p=0.003)。ずり速度AUCで正規化しても有意であった(p=0.012)。また、反応性充血(上腕動脈血流AUC)は468±167(0日目)から577±199 mL(7日目)となり、有意であった(p=0.002)。さらに、PLM(大腿動脈血流AUC)も139±130(0日目)から198±115 mL(7日目)となり、有意であった(p=0.011)。6分間の歩行距離についても、377±27(0日目)から397±27 m(7日目)に有意に増加した(+20 m, p<0.05)

"Fish oil supplementation improves endothelial function in normoglycemic offspring of patients with type 2 diabetes"
「魚油サプリメントは、2型糖尿病患者の子孫の血糖値が正常範囲内にある場合血管内皮機能を改善する」


著者:
Stefano Rizza , Manfredi Tesauro , et al.
出典:
Atherosclerosis (2009);206(2):569-574
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/pmid/19394939/

要約:
2型糖尿病と診断された親を持つ健康な被験者50名(男性25名、女性25名)が、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)を含むn-3系多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)もしくはプラセボを1回1カプセルで1日2回12週間毎日服用した。各カプセルは、1000mgのn-3 PUFA(0.9~1.5:1の比率のEPA + DHAのエチルエステルが85%以上)または1000mgの精製オリーブオイル(プラセボ)であった。n-3 PUFAを投与された被験者は、FMD値が9.1 ± 5.8%(介入前)から11.7 ± 4.4%(12週間後)(p = 0.02)と有意に改善し、血漿トリグリセリド*が117 ± 73 mg/dl(介入前)から86 ± 44 mg/dl(12週間後)(p = 0.001)に、TNF-α値が8.9 ± 2.3 pg/ml(介入前)から6.8 ± 2.7 pg/ml(12週間後)(p = 0.001)に有意に減少し、血漿アディポネクチン**値は7.8 ± 4.5 μg/ml(介入前)から9.5 ± 5.1 μg/ml(12週間後)(p = 0.09)に上昇傾向が認められました。
*血漿トリグリセリド:血液中に存在する中性脂肪(トリアシルグリセロール、TG)の濃度
**血漿アディポネクチン:インスリンの働きを正常に戻す作用があり、血糖値の安定に寄与

"Curcumin supplementation attenuates the decrease in endothelial function following eccentric exercise"
「クルクミンの補給は遠心性運動後の内皮機能の低下を軽減する」


著者:
Youngju Choi, Yoko Tanabe, et al.
出典:
Journal of Exercise Nutrition & Biochemistry (2019);23(2):7-12.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/pmid/31337199/

定期的な筋力トレーニングを行っていない、非喫煙者の非肥満な14名の若年男性(21~29歳)は、運動の1時間前に 150 mg のプラセボ(デキストリンとマルトース)またはクルクミンを摂取した。運動として非利き腕で肘屈筋の遠心性運動を 50 回 1 セット実施した。プラセボ群では運動60分後にFMDが有意に減少した(平均減少、-2.7 ± 1.0%)のに対し、クルクミン群では変化は観察されなかった(0.8 ± 1.1%)。さらにプラセボ群とクルクミン群の間では、遠心性運動前後のFMDの変化に有意差が認められた(p < 0.05)

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