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【文献紹介】大気汚染物質とFMDのコピー

大気汚染とFMD|PM2.5・PM10が血管内皮機能に与える影響

大気汚染とFMD|PM2.5・PM10が血管内皮機能に与える影響

PM2.5やPM10などの粒子状物質を含む大気汚染は、心血管疾患の発症リスクと関連する環境因子として研究されています。
その背景の一つとして、酸化ストレスや炎症などを介した血管内皮機能への影響が考えられています。
FMD(血流依存性血管拡張反応)は、血流の増加に対して血管がどの程度拡張するかを評価する方法で、大気汚染と血管機能との関係を調べる研究でも用いられています。 本ページでは、大気汚染・PM2.5とFMD、血管内皮機能との関係について、公開された研究論文をもとに整理しています

FMDの測定原理や基本的な考え方については、FMDをご存じですか?をご覧ください。

目次

若年健常者において、日々の大気汚染への曝露は内皮依存性血管拡張反応を低下させる

Acute daily exposure to ambient air pollution impairs endothelium-dependent vasodilator responses in young, healthy individuals

著者:B Jasiewicz-Honkisz , G Osmenda , et al.

出典:J Physiol Pharmacol. (2023);74(4)389–401.

リンク:論文ページ


要約: 筆者らは、若く健康な成人において、日常的な大気汚染への曝露と血管内皮機能との関係を検討した観察研究を実施した。対象はポーランド・クラクフ在住の39名で、心血管疾患や主要な動脈硬化リスク因子を持たない人が中心であった。大気中のPM2.5、PM10、NO₂、SO₂、CO、O₃などの濃度を市内測定局のデータから把握し、同日に上腕動脈FMDを測定した。その結果、PM2.5およびPM10の濃度が高いほどFMDが低いという有意な負の相関が認められた。統計学的調整後も、PM2.5が10 µg/m³高い場合にはFMDが約0.45ポイント、PM10では約0.30ポイント低い関係が示された。一方、ニトログリセリンによる内皮非依存性血管拡張反応には大気汚染との関連を認めなかった。さらに18名を約9~10か月後に再評価したところ、PM2.5、PM10濃度の低下が大きい人ほどFMDの改善も大きかった。これらの結果から、粒子状物質への日常的な曝露が、血管平滑筋ではなく血管内皮依存性の拡張機能に影響する可能性が示された。


微小粒子状物質への長期および短期曝露に対する血管反応:MESA Air(多民族による動脈硬化と大気汚染の研究)

Vascular Responses to Long- and Short-Term Exposure to Fine Particulate Matter: MESA Air (Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis and Air Pollution)

著者: Ranjini M. Krishnan, Sara D. Adar, et al.

出典:J Am Coll Cardiol. (2012)60(21):2158-2166.

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要約: 筆者らは、微小粒子状物質(PM2.5)への短期および長期曝露と血管機能との関係を、MESA Air参加者3,040名の大規模観察研究で確認した。対象は45~84歳の、登録時に臨床的心血管疾患を有していない多民族集団で、平均年齢は約61歳であった。血管機能は上腕動脈FMDで評価し、PM2.5曝露は自宅住所をもとに推定した年間平均濃度を長期曝露、検査当日から数日前の都市測定局データを短期曝露として解析した。その結果、年間平均PM2.5濃度が3 µg/m³高いごとにFMDは約0.3ポイント低く、この関係は年齢、性別、喫煙、血圧、脂質、血糖など多数の心血管リスク因子を調整した後も有意であった。一方、安静時上腕動脈径には明確な関連を認めなかった。また、検査当日から数日前までの短期PM2.5曝露はFMD低下方向の傾向を示したものの、統計学的に有意ではなかった。著者らは、長期的なPM2.5曝露が酸化ストレスや炎症を介して血管内皮機能を低下させる可能性を考察している。本研究は、長期間にわたる大気汚染曝露とFMD低下との関連を大規模集団で示した点が特徴だが、観察研究である。


近代化が進む中国における粒子状物質大気汚染(PM2.5)が動脈硬化に及ぼす影響:CATHAY研究からの報告

The impact of particulate matter air pollution (PM2.5) on atherosclerosis in modernizing China: a report from the CATHAY study

著者:K S Woo, P Chook, et al.

出典:Int J Epidemiol. (2021);50(2):578-588.

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要約: 筆者らは、中国の複数地域に居住する漢民族1,656名を対象に、長期的なPM2.5曝露と血管内皮機能および動脈硬化との関連を検討した横断研究を実施した。対象者は明らかな心血管疾患を有しない成人で、地域ごとの年間平均PM2.5濃度を衛星データや地上観測情報から推定し、上腕動脈FMDと頸動脈内膜中膜厚(IMT)を測定した。その結果、PM2.5曝露が最も低い群ではFMDが8.50±2.52%であったのに対し、最も高い群では7.84±1.77%と有意に低かった。一方、ニトログリセリンによる内皮非依存性血管拡張反応には群間差を認めず、血管内皮側の機能低下が示唆された。また、頸動脈IMTは低曝露群0.63±0.15 mmに対し、高曝露群では0.68±0.13 mmと有意に厚かった。特にIMTとPM2.5との関連は、年齢、血圧、脂質、体格、居住地域などを調整した後も有意であった。一方、FMDとの関連は居住地域を調整すると有意ではなくなった。以上から、長期的なPM2.5曝露は血管機能低下に加え、血管壁の構造的変化を伴う潜在性動脈硬化と関連する可能性が示された。


超微粒子および微粒子状物質の吸入は全身の血管機能を阻害する

Inhalation of ultrafine and fine particulate matter disrupts systemic vascular function

著者:Kenneth W Rundell, Jay R Hoffman, Renee Caviston, et al.

出典:Inhal Toxicol. (2007);19(2):133-140.

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要約: 筆者らは、健康な若年男性16名を対象に、超微小・微小粒子状物質への短時間曝露が全身の血管機能に与える急性影響を検討した。対象者は別日に、粒子濃度の低い大学構内と、交通由来粒子濃度の高い幹線道路沿いの環境で、それぞれ最大心拍数の85~90%に相当する強度で30分間ランニングを行った。粒子数濃度は低曝露環境で約5,300 particles/cm³、高曝露環境では約143,500 particles/cm³と約27倍の差があった。血管機能は上腕動脈FMDと、前腕筋の血流再開後の再酸素化速度で評価した。その結果、高曝露環境ではFMDが6.8±3.58%から0.30±2.74%へ著しく低下し、安静時上腕動脈径も約4%縮小した。一方、低曝露環境ではFMDの有意な低下は認められなかった。さらに、高曝露後には前腕筋の再酸素化速度が約55%低下し、FMD低下との間にも有意な相関がみられた。粒子吸入による酸化ストレスや炎症、NO利用可能性の低下などが関与した可能性を考察している。短時間の高濃度粒子曝露でも、大血管と微小循環の双方に急性の血管機能障害を生じ得ることを示した研究である。


中国高齢者におけるPM2.5およびその構成成分への曝露が血管内皮機能に及ぼす短期的な影響

Short-term effects of PM2.5 and its components exposure on endothelial function in Chinese elders

著者:Rukun Chen, Kai Zhang, et al.

出典:Sci Total Environ. (2024);907:167909.

リンク:論文ページ


要約: 筆者らは、上海在住の65歳以上812名を対象に、短期的なPM2.5曝露と血管内皮機能との関連を検討した。対象者の平均年齢は70.6歳で、高血圧を有する者が85.6%を占めた。血管内皮機能は上腕動脈FMDで評価し、PM2.5については検査当日から5日前までの日別曝露量を解析した。さらに、ブラックカーボン、有機物、硫酸塩、硝酸塩、アンモニウムの5成分についても検討した。その結果、PM2.5曝露量が高いほどFMDが低い傾向が認められ、特に検査の3~5日前の曝露で有意な関連がみられた。成分別解析では、3日前の曝露においてブラックカーボンがFMD低下への主要な寄与成分として、異なる2つの統計手法で一貫して示された。一方、4~5日前では硫酸塩や有機物などの関与も示唆されたが、解析手法によって結果は一致しなかった。著者らは、PM2.5吸入後の酸化ストレスや炎症反応が数日かけて進行し、NOの利用可能性低下などを介して血管内皮機能を障害する可能性を考察している。ただし観察研究であり、因果関係を直接証明したものではない。




本ページは公開論文の要約であり、診断・治療の代替ではありません。

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